映画『また逢いましょう』

明るく生きよう 介護施設ハレルヤでの日々

2025年7月18日(金)より順次全国ロードショー!!

Introductionイントロダクション

お互いの人生を理解しあえば自分の生きてきた意味を掴める。生に対して希望を見出し、誰にも訪れる死を輝いたものとして受け止めて、笑顔で再会を約束しあえる—。
『また逢いましょう』は、ある介護施設の人間模様を通じて生と死の関係を深く、そして温かく描いた、現代に届けるにふさわしい映画である。
原案は、京都市右京区でデイケア施設「ナイスデイ」を運営する伊藤芳宏の著書「生の希望 死の輝き 人間の在り方をひも解く」(幻冬舎刊)。利用者のライフストーリーの聞き取りを治癒に活かす独自の取り組みは今、介護業界を越えた大きな反響を呼んでいる。
監督は、やはり京都と東京を拠点に映画のプロデュースを続け、ご当地映画といえる2019年の『嵐電』で高い評価を受けた西田宣善。2人の出逢いから新たな京都発映画が生まれた。本作は、西田の初の劇場映画監督作となる。脚本は、『夜明けまでバス停で』でキネマ旬報脚本賞などを受賞した梶原阿貴。伊藤の著書に現代社会に生きる女性の視点を加えて、フィクション化。より活き活きとした広がりを持たせている。
 
主人公の漫画家・夏川優希を演じるのは主演作『STRANGERS』『初級演技レッスン』などの映画や舞台で注目度上昇中の大西礼芳。『嵐電』と『夜明けまでバス停で』出演を着実にステップにしてきた大西にとって、縁に結ばれた記念すべき主演作となる。前半は何事にも受け身だった優希が自分の意志で走り出すようになる過程を繊細に表現し、新しい代表作となるにふさわしい魅力を見せてくれる。編中のマンガとピアノ演奏も、自身で手がけているのにも注目。
優希の父で、頸髄損傷で生活の自由を奪われた絶望と闘う宏司を演じるのは伊藤洋三郎。施設で明るく奮闘するベテラン職員・洋子役は中島ひろ子。利用者と職員どちらも仲間として信頼の目で見つめる所長役は田山涼成。そのほかカトウシンスケ、筒井真理子、田中要次、梅沢昌代など、実力派キャストが脇を固め、誰もが自分だけの人生を生きているし、生きて良いのだ—というこの映画の根幹のメッセージを見事に体現している。
第20回大阪アジアン映画祭インディフォーラム部門上映作品

Storyストーリー

東京でアルバイトをしながら漫画を描いている夏川優希(大西礼芳)は、父親・宏司(伊藤洋三郎)が転落事故で入院した知らせを聞いて京都市右京区の実家に戻る。宏司の診断の結果は、手足に重い麻痺が残る頸髄損傷だった。
優希はひとり娘で、母はすでに他界している。家に残って父親の世話をするが、無口で頑固な宏司とは昔から会話もろくに弾まない。障害を抱えた宏司が何を考えているのか分からないし、ちょうど出版社に持ち込んでいた漫画の原稿も不採用で戻ってくる。すっかり先が見えない心境のまま京都での生活を再開させる優希。
宏司は退院後、介護施設「ハレルヤ」に通所を始める。ハレルヤは、ハイデガーの哲学を学んできた所長・武藤雅治(田山涼成)がその思想を運営に活かしているという施設だ。優希も付き添いでおそるおそる行ってみると、そこは利用者と職員が和気あいあいと談笑しリハビリテーションに励む、居心地の良さそうな空間だった。
人と関わるのを苦手にしてきた宏司が、ハレルヤには嫌がらず通うようになった。ここには何か独特の魅力があるらしい。いつしか優希もハレルヤに行き、明るいベテラン職員・向田洋子(中島ひろ子)らと会うのが楽しみになっていく。通所先にハレルヤを勧めてくれたケアマネジャー・野村隼人(カトウシンスケ)とも、野村が大の漫画好きなのをきっかけに距離が近づいていく。
しかしハレルヤにも様々な人生がある。職場では陽気にふるまう洋子も、若い職員たちとの意識のズレに苦労しているし、家に帰れば高校生の娘・ルイ(神村美月)の気持ちが掴めない。利用者のひとりである加納ゆかり(田川恵美子)は、脊髄梗塞で下半身を動かせなくなった自分の現実を受け入れ難く、誰にも心を開けずにいる。
そんな人々を孤立させず結び付けているのは何か—。優希は次第に、いつも温和な笑顔で利用者や職員を見守る武藤所長の考え方の深さに魅かれていく。
武藤が考案した、利用者それぞれのライフストーリーを聞き取る「ハレルヤ通信」。それは施設内のコミュニケーションを円滑にするだけでなく、誰にも訪れる死の運命を肯定的に受け入れるためのものだった。
ハレルヤのムードメーカー的な利用者だった東田梅子(梅沢昌代)の急逝や、「ハレルヤ通信」を通して初めて知る宏司の内面の思い。それに、洋子に強引に巻き込まれた新しいレクリエーションの準備。急に様々なことが起きるなかで、優希も自分自身と出逢い直す日を迎える—。

Cast & Staffキャスト&スタッフ

大西礼芳夏川優希 役

1990年生まれ、三重県出身。高橋伴明監督『MADE IN JAPAN こらッ!』で映画デビュー。映画出演作に、瀬々敬久監督『菊とギロチン』、行定勲監督『ナラタージュ』、鈴木卓爾監督『嵐電』、土屋貴史監督『花と雨』、高橋伴明監督『夜明けまでバス停で』、池田千尋監督『スタートアップ・ガールズ』『大江崇夢允監督『鯨の骨』、池田健太監督『STRANGERS』(主演)、串田壮史監督『初級演技レッスン』などがある。TVドラマ、舞台にも多数出演している。

中島ひろ子向田洋子 役

1971年生まれ、東京都出身。89年映画デビュー。90年、初主演を務めた中原俊監督『櫻の園』で、第14回日本アカデミー賞新人賞を受賞し、脚光を浴びる。94年、NHKドラマ『雪』主演以降、連続テレビ小説に多数出演し、TVドラマ、映画と活躍を続ける。近年の主な映画出演作に、長尾元監督『いつかのふたり』(主演)、河瀬直美監督『朝が来る』、三宅唱監督『ケイコ目を澄ませて』などがある。梶原とは、『櫻の園』で共演して以来のタッグ。

カトウシンスケ野村隼人 役

1981年生まれ、東京都出身。2016年、小路鉱史監督『ケンとカズ』で第31回 高崎映画祭最優秀新進俳優賞受賞。主な出演作に、アルチュール・アラリ監督『ONODA 一万夜を越えて』、奧田裕介監督『誰かの花』(主演)、石川慶監督『ある男』、森達也監督『福田村事件』、前田哲監督『大名倒産』、吉田恵輔監督『ミッシング』、吉田大八監督『敵』などがある。西田がプロデュースした吉行由実監督のオリジナルビデオ作品『35歳の童貞男』に主演している。

伊藤洋三郎夏川宏司 役

1955年生まれ、静岡県出身。早稲田大学中退後、六月劇場にて裏方の後、自由劇場を経て映画 TVへ。89年松田優作演出の舞台「モーゼル」に主演。その後、演劇ユニット「海のサーカス」「水銀」にてプロデュースと出演。主な出演作品に松田優作監督『ア・ホーマンス』、崔洋一監督『刑務所の中』、石井隆監督『花と蛇』、同監督『GONIN サーガ』、武正晴監督『百円の恋』、長澤雅彦監督『恋』(主演)、福間健二監督『秋の理由』(主演)など。CM、ナレーションも多数。

梅沢昌代東田梅子 役

1953年生まれ、東京都出身。文学座を経て、多くの舞台、テレビドラマ、映画など幅広く活躍を続けている。近年の主な出演作は、映画では、森ガキ侑大監督『愛に乱暴』、今泉力哉監督『かそけきサンカヨウ』、犬童一心監督『最高の人生の見つけ方』、大森立嗣監督『光』、真利子哲也監督『宮本から君へ』、TVドラマでは、TBS『御上先生』、NHK『ミワさんなりすます』『らんまん』大河ドラマ『おんな城主 直虎』、舞台『天保十二年のシェイクスピア』『ロスメルスホルム』など。今年秋に映画『ブルーボーイ事件』(飯塚花笑監督)が公開予定。

田中要次2時間ドラマの犯人 役

1963年生まれ、長野県出身。27歳で上京し、91年、竹中直人の初監督映画『無能の人』に照明助手として参加。エキストラも務め、スタッフ兼業の俳優として芸能活動を開始した。2001年にCXのTVドラマ『HERO』で、バーのマスター役に起用されブレイクを果たす。17年には西村喜廣監督『蠱毒 ミートボールマシン』で映画初主演を務めた。主な映画出演作に、クエンティン・タランティーノ監督『キル・ビル』、八木順一朗監督『実りゆく』など。TVでは、CX『アバランチ』、NHK連続テレビ小説『虎に翼』、TX『量産型リコ –最後のプラモ女子の人生組み立て記–』などがある。西田がプロデュースした五藤利弘監督『レミングスの夏』に出演している。

田山涼成武藤雅治 役

1951年生まれ、愛知県出身。文学座研究所を経て、劇団夢の遊眠社に入団。以降、多くの舞台やテレビドラマ、映画で活躍する。近年の主な出演作は、映画では、久万真路監督『ラストターン』、河毛俊作監督『仕掛人・藤枝梅安』、中江和仁監督『きのう何食べた?劇場版』、三木孝浩監督『きみの瞳が問いかけている』、舞台『DeathTakes A Holiday』、『シラの恋文』、ドラマでは、NHK大河ドラマ『べらぼう』、BS朝日『無用庵隠居修行』など、NTV『ぶらり途中下車の旅』では、旅人をつとめている。

筒井真理子お華さん 役

早稲田大学在学中に劇団「第三舞台」で初舞台。その後、数々のドラマや舞台、映画で活躍。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した深田晃司監督『淵に立つ』(16)で毎日映画コンクール、ヨコハマ映画祭、高崎映画祭など多数の映画祭で主演女優賞受賞。主演作品で深田監督『よこがお』(19)では芸術選奨映画部門文部科学大臣賞、全国映連賞女優賞、Asian Film Festivalでは、Best. Actress最優秀賞を受賞。最新主演映画荻上直子監督『波紋』(23)では、日本映画批評家大賞主演女優賞を受賞。国内・海外から映画、TVの連続ドラマと引っ張りだこの人気。梶原脚本の『夜明けまでバス停で』に出演した他、西田が出版した「フィルムメーカーズ24 ホン・サンス」の責任編集を務めた。

製作・監督西田宣善

1963年生まれ、京都府出身。明治大学文学部卒業。キネマ旬報社などを経て、92年有限会社オムロ(設立時はオムロピクチャーズ)設立。高校時代から大学時代を中心に、約20本の中短編の自主映画を監督し、長編『VIRIDIANN ROAD』(1985)があるが、本作が劇場映画監督デビュー作品である。製作作品に、風間志織監督『冬の河童』(ロッテルダム国際映画祭グランプリ)、矢崎仁司監督『無伴奏』(サハリン国際映画祭審査員特別賞)、鈴木卓爾監督『嵐電』(高崎映画祭、TAMA映画賞最優秀作品賞、キネマ旬報ベスト・テン第9位)など。配給作品に中田秀夫監督『ラストシーン』、三池崇史監督『IZO』、三島有紀子監督『東京組曲2020』など。出版物の代表作に「フィルムメーカーズ」シリーズ、「溝口健二著作集」など。映画宣伝、映画評論も多数手がける。溝口健二の研究者としても知られている。

脚本梶原阿貴

1990年、中原俊監督『櫻の園』で俳優デビュー。映画出演作品に、大林宣彦監督『青春デンデケデケデケ』、諏訪敦彦監督『M/OTHER』、七里圭監督『のんきな姉さん』、タナダユキ監督『ふがいない僕は空を見た』などがある。2007年「名探偵コナン」で脚本家デビュー。その後、アニメ、テレビドラマを経て、ANARCHY監督の映画『WALKINGMAN』で脚本、監督補を務める。22年高橋伴明監督『夜明けまでバス停で』で第96回キネマ旬報ベスト・テン日本映画脚本賞、おおさかシネマフェスティバル2023脚本賞。第77回毎日映画コンクール日本映画優秀賞・脚本賞ノミネート。2025年7月公開の高橋伴明監督『桐島です』では脚本を担当。

原案伊藤芳宏

京都市出身。1961年京都大学工学部入学、63年京都大学医学部編入、67年京都大学医学部卒業。同年京都大学生理学系博士課程入学、71年満期退学。同年京都市内の総合病院の放射線科医長に就任、81年退職。同年イトウ診療所開設、2001年大規模介護デイケア(定員60名)を併設した。22年、映画の原案となった「生の希望 死の輝き 人間の在り方をひも解く」を執筆。他の著書に、「自律訓練法の医学」(中公新書)がある。現在、新著を執筆中である。

音楽鈴木治行

現代音楽作曲家。「二重の鍵」で第16回入野賞受賞。ガウデアムス国際音楽週間(アムステルダム)、Les Inouies(ボルドー)、Experimental Intermedia、Music From Japan(ニューヨーク)などで作品が演奏された。映画では、諏訪敦彦監督『M/OTHER』(第54回毎日映画コンクール音楽賞)、同監督『H story』、同監督『不完全なふたり』、渡辺智史監督『よみがえりのレシピ』、舩橋淳監督『フタバから遠く離れて』、風間志織監督『チョコリエッタ』など。『吸血鬼ノスフェラトゥ』、『裁かるゝジャンヌ』、『カメラを持った男』、『タルチュフ』などでサイレント映画ライヴも行う。西田監督の短編『第三章』の他プロデュース作品で羽生研司監督『リベンジポルノ』2作などの音楽を担当している。

Credit

【出演】
大西礼芳 中島ひろ子 カトウシンスケ
伊藤洋三郎/加茂美穂子 田川恵美子 神村美月 梅沢昌代
田中要次 田山涼成 筒井真理子
 
【スタッフ】
製作・監督:西田宣善
脚本・アソシエイトプロデューサー:梶原阿貴
原案:伊藤芳宏「生の希望 死の輝き 人間の在り方をひも解く」(幻冬舎刊)
音楽:鈴木治行
撮影監督:藍河兼一
美術:竹内公一、竹内悦子
録音:廣木邦人、荒木祥貴
編集:藤田和延
監督補:鈴木農史
製作:ジュリア、オムロ
配給:渋谷プロダクション
宣伝:MAP
2025年/カラー/91分
©︎Julia / Omuro

Trailer予告編

特報(30秒)

本予告(90秒)

Theater劇場情報

北海道

札幌サツゲキ2025年8月1日(金)〜7日(木)

関東

東京K‘s cinema2025年7月19日(土)〜
※初日舞台挨拶
神奈川横浜シネマリン2025年8月30日(土)〜
神奈川あつぎのえいがかんkiki2025年9月5日(金)〜
栃木宇都宮ヒカリ座2025年9月26日(金)〜

中部

長野長野千石劇場2025年7月19日(土)〜
愛知ナゴヤキネマ・ノイ近日

関西

京都アップリンク京都2025年7月18日(金)〜
※初日舞台挨拶
大阪シネヌーヴォ2025年7月18日(金)〜
※初日舞台挨拶
神戸神戸映画資料館2025年7月25日(金)〜

中国

山口シネマポスト2025年8月16日(土)〜

九州

大分別府ブルーバード劇場近日