Storyストーリー
東京でアルバイトをしながら漫画を描いている夏川優希(大西礼芳)は、父親・宏司(伊藤洋三郎)が転落事故で入院した知らせを聞いて京都市右京区の実家に戻る。宏司の診断の結果は、手足に重い麻痺が残る頸髄損傷だった。
優希はひとり娘で、母はすでに他界している。家に残って父親の世話をするが、無口で頑固な宏司とは昔から会話もろくに弾まない。障害を抱えた宏司が何を考えているのか分からないし、ちょうど出版社に持ち込んでいた漫画の原稿も不採用で戻ってくる。すっかり先が見えない心境のまま京都での生活を再開させる優希。
宏司は退院後、介護施設「ハレルヤ」に通所を始める。ハレルヤは、ハイデガーの哲学を学んできた所長・武藤雅治(田山涼成)がその思想を運営に活かしているという施設だ。優希も付き添いでおそるおそる行ってみると、そこは利用者と職員が和気あいあいと談笑しリハビリテーションに励む、居心地の良さそうな空間だった。
人と関わるのを苦手にしてきた宏司が、ハレルヤには嫌がらず通うようになった。ここには何か独特の魅力があるらしい。いつしか優希もハレルヤに行き、明るいベテラン職員・向田洋子(中島ひろ子)らと会うのが楽しみになっていく。通所先にハレルヤを勧めてくれたケアマネジャー・野村隼人(カトウシンスケ)とも、野村が大の漫画好きなのをきっかけに距離が近づいていく。
しかしハレルヤにも様々な人生がある。職場では陽気にふるまう洋子も、若い職員たちとの意識のズレに苦労しているし、家に帰れば高校生の娘・ルイ(神村美月)の気持ちが掴めない。利用者のひとりである加納ゆかり(田川恵美子)は、脊髄梗塞で下半身を動かせなくなった自分の現実を受け入れ難く、誰にも心を開けずにいる。
そんな人々を孤立させず結び付けているのは何か—。優希は次第に、いつも温和な笑顔で利用者や職員を見守る武藤所長の考え方の深さに魅かれていく。
武藤が考案した、利用者それぞれのライフストーリーを聞き取る「ハレルヤ通信」。それは施設内のコミュニケーションを円滑にするだけでなく、誰にも訪れる死の運命を肯定的に受け入れるためのものだった。
ハレルヤのムードメーカー的な利用者だった東田梅子(梅沢昌代)の急逝や、「ハレルヤ通信」を通して初めて知る宏司の内面の思い。それに、洋子に強引に巻き込まれた新しいレクリエーションの準備。急に様々なことが起きるなかで、優希も自分自身と出逢い直す日を迎える—。